課題の多い経団連の介護デジタル革新の提言

日本経済団体連合会(会長・十倉雅和・住友化学会長)は、1月18日、人生100年時代に最後まで健康で生きがいを感じながら過ごすことは多くの人々に共通する願いであり、とりわけヘルスケアはデジタル革新(DX)恩恵が幅広く享受され得る分野であるとして「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ」の提言・報告書を発表した。


提言では、新しい選択肢としてデジタル技術を活用したヘルスケアに焦点を当てて、主に「医療・介護提供体制のDX」をさらに掘り下げたものとなっている。


各論では、「健康管理・増進」「診療」「調剤・服薬指導」「手術」「介護」「治験」の6分野に焦点を当て、それぞれ「1.目指す姿」「2.社会的意義」「3.現状・課題」「4.提言」を行っている。


「介護」分野では、「1.目指す姿」として、これまで全て人の手によって提供されてきた介護サービスを、例えば、介護予定・記録システムの活用で職員が業務スケジュールと記録をスマホ管理することで間接業務の効率化を図り、見守りセンサーの活用で2時間に1回の巡回から常時見守りが可能となり、夜間の職員の負担軽滅や必要人数の削減が可能となるなど、テクノロジーを活用することで、より高品質かつ効率的に提供できるとしている。


また、テクノロジーの活用から得られたデータを分析することで、経験や「勘」などではなく分析結果をもとに入居者の重症化予測など、最適なリハビリテーションが提供できるとしている。


「2.社会的意義」としては、テクノロジーやデータの活用により、介護の質を落とさずに介護業務が効率化され、将来わが国で必要とされる介護職員数を確保でき、介助者の身体的、心理的負担の軽滅にもつながり、介護の専門性が高まり、仕事のやりがいや魅力の向上、利用者の異変に早期から適切に介入できることで、重症化予防や入院抑制につながるとしている。


「3.現状・課題」については、将来の要介護認定者の増加に対応するため、厚生労働省の試算によると2040年度までに約69万人の介護職員を確保しなければならないが、生産年齢人口が減少する中、非常に厳しい状況にあり、テクノロジーを活用した介護業務の効率化、データを活用した重症化予防や自立支援介護が注目されると問題提起をしている。


しかしながら、わが国の介護現場は、多くの小規模事業者に支えられており、導入や運営には一定のコストが発生するテクノロジーの活用、デジタル化が進みにくい状況もあると指摘している。


以上3つの分析から、「4.提言」として以下の3つを上げている。


①介護事業所で使用するデジタルデバイスの標準化

各介護事業所で使用する各種業務システム、見守りセンサーや介護ロボットなどデジタルデバイスの安全基準や性能基準、出力仕事については政府もしくは政府が委託する第三者機関による標準化を進めるべきである。


②テクノロジー活用を積極的に評価する新たな介護品質評価基準の策定

介護ロボットや情報技術の導入が介護の質の向上や効率化に寄与することが明らかになっており、テクノロジーを活用しながら人が関わる業務の質の向上に取り組んでいる介護事業者に対して新たな介護品質評価基準の策定を求める。


③介護施設人員基準3:1の見直し

テクノロジー、データ活用による業務時間の削減効果が認められる場合、改善効果の範囲で配置すべき人員数を見直すべきである。


今回の提言に対して「3.現状・課題」の項でも指摘されている通り、2040年度までに約69万人の介護職員の増加を必要とし、テクノロジーの活用によって介護業務の介護業務の効率化を図ることで介護職員の不足を補うとしているが、民間の介護事業者大手4社の拠点数は全体の1割にも満たず、且つその他の大半は社会福祉法人や中小企業が担っている現状を考えると人材やコストの点で実現性のハードルは高く、解決しなければならない課題は多い提言と言わざるを得ない。


介護職員の不足を補うには、介護の技能実習生も含めた外国人労働者の活用も考慮すべきであろう。


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